2010年08月04日

葛藤について

社会福祉士や精神保健福祉士の履修科目には心理学が含まれている。
新しい教育プログラムでは心理学理論と心理的支援という言葉になっているかもしれない。
対人関係が重要な職種ではぜひとも勉強して欲しいし、習得しておきたい内容がたくさん含まれている。
心理カウンセラーとして知られる臨床心理士では最も重要な科目であることでも有名だ。
そんな心理学の中でもみなさんの日常生活に関連するキーワードを一つご紹介したい。

「葛藤」という言葉を聞いたことのない人は少ないだろう。
簡単に説明すれば、何かしらの欲求を満たしたいのだが、欲求を満たすものが複数ある時に自分がどうしたらよいか迷うことだ。
AとBを両方欲しいが、片方を取ったらもう片方はあきらめなければならないといった場合が単純だろうか。
また、両者のもつ魅力が等しいほど葛藤は強くなるとされる。

先日、学友間で話をしていたところ、ある男子学生からこんな話が出た。
「彼女が欲しいけど、女性が好きになれない。」というものだ。
彼の話を聞くと、男性が生得的に持つ女性を好きになるという感覚自体は正常のようだが、幼少期からの生活体験から女性との心理的な距離が近づくことを異常に恐れるのだという。
女性恐怖症とか性嫌悪障害というキーワードが該当しそうな状態なのである。
彼が言う恐怖症とは、「高所恐怖症のようなもので、そこに素晴らしい景色が広がっていて、できるものなら見てみたいのだが、高いところにはいきたくない。」というものを、女性に置き換えたらおよそ理解しやすいという。
置き換えると次のようになる。
「きっと女性との付き合いは人生を豊かにしてくれて、できるものなら付き合ってみたいのだが、女性とは付き合いたくない。」
ここでお気づきの方も多いと思うが、この男性は女性と付き合いたいのか付き合いたくないのかよくわからないと思わないだろうか。
本人に聞いてみると、「女性と付き合ってみたい気持ちは多少あるものの、女性と付き合いたくない気持ちの方が大きい」というのである。

ここで彼をサポートするにあたって非常に悩むことがあった。
彼の意思は大筋で女性と付き合いたくないといっているのだが、その逆も同等のレベルで存在するのだろうということだ。
つまり、彼女を作る方向で応援するのか、彼女を作らないままでいる方向で応援するのかでは内容は真逆といっていいほどに変わってしまうからだ。

ただ、彼の悩みを客観的にみると、彼には彼女はおらず、彼女を作りたくないのだから放っておけば何も問題はないのだ。
しかし、彼は悩んでいる。つまり彼女が欲しいのだろうと読み取るべきだと私は思う。

このケースで難しいのは、彼自身で自己矛盾を抱えていることである。
目標とするものそのものが正の誘因であり、負の誘因でもあるのだ。
私を含め、多くの仲間は女性の友達を増やしたり、友達づきあいから女性に慣れるべきという意見が大半を占めた。
しかし、彼はやっぱり納得がいかない様子だった。

彼には正直悪いような気がするのだが、こうした精神的な問題を解決するに当たっては、本人の自分を変えようとする意志が不可欠なのだ。
その意志が問題解決を回避するほうがよいといっているのだから、解決は途端に困難を極める。
治さない方が彼にとってはまったくもって被害がないのだ。
むしろ治そうとする方が本人にとって害となる状況になっているのが難しいところだ。
まして幼少期からの積み重ねでそのような状態に陥っている場合、正常な状態を意識することがそもそも難しい。
また、彼は非常に真面目な性格のため、自分の問題を治すために人を利用することを非常に嫌がっている。

とにかく時間をかけて少しずつ慣れていってはとアドバイスをする程度にとどめたが、なかなか難しいようだった。

「葛藤」をテーマにちょっとした事例を記載してみたが、彼の場合は葛藤もあれば少々別の問題も持ち合わせているため、一筋縄ではいかないと思われる。
しかし、心のメカニズムとしては葛藤という要素が占めるウェイトは大きい。
葛藤は悩みという形で表に現れるが、私が思うに悩みの相談を受けるときは、問題を解決しようとしない方がいいのではないかと思う。
他人が素晴らしい答えを見つけてくれるのもうれしいものだが、葛藤に関してはどちらかに偏るともう片方が気になるものだ。
本人の悩みで消耗した精神的エネルギーの補充に重点を置く方が、むしろ正解なのではなかろうかと思う。
悩みはどうやっても解決できないことがあることを覚悟する必要があるのではないかと思った。
posted by トモロウ at 17:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/39976616
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック